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愛犬みも次郎先生とのカントリーライフ


by mimojiro
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読み終えてなお・・・~ミステリ原稿・夜の獣たち~

どんよりと曇った雨雲で空一面を覆う日が
何日つづいたことでしょう。

湿度が高く、洗濯物の乾きが悪いです。

身体中がいやな汗でベトベトするので
シャワーじゃなくてちゃんとお風呂に入ります。
こんな灰色の空に似合う長風呂で読む本を探しましょう。

これにします。
~ミステリ原稿 オースティン・ライト著~
読み終えてなお・・・~ミステリ原稿・夜の獣たち~_d0237053_2133715.jpg

何年も前、ミステリ小説好きのかずこさんが図書館から
借りてきたのですが、この本は涼たた向きだよと手渡され
読んでみたら、ううむ・・・さすが母親。
娘の好みをよくわかってるな、と、
借り物では我慢できず、手に入れた本。
どれ、久しぶりに読み返そうではありませんか!
読み終えてなお・・・~ミステリ原稿・夜の獣たち~_d0237053_2215584.jpg

この小説は作中作という手法を取り入れた
入れ子構造になっています。

49歳の主婦スーザンはある日、別れて20年経つ前夫エドワードから
彼の書いた小説の批評をお願いされます。
物語は、エドワードが書いた小説「夜の獣たち」のストーリーと
スーザンの深層心理を交えながら、終始、スーザンを捉えて離さない
「漠然とした不安」を微妙なタッチで描く
推理小説というより、心理小説に近い内容となっています。

なので、推理小説ファンやミステリファンには
かなり物足りない小説でしょうが、人間が持ち合わせる複雑な気持ちが
大好きな涼たたの心をくすぐるに、もってこいの小説です。

スーザンはエドワードの原稿が届いてからというもの
いいようのない「苛立ちと不安」にかられ
なかなか原稿を手に取ろうとしませんでした。
やっと意を決して小説「夜の獣たち」を読みはじめますが
スーザンはそのストーリーに驚いてしまいます。

「夜の獣たち」は、なかなか残酷な内容で、
主人公トニーは奥さんと娘さんの3人で別荘へ向かう深夜ドライブ中
ハイウェイで暴漢に遭遇し、奥さんと娘さんは連れさられ、遺体で発見されます。
一年後、担当警部補から主犯が見つかったと報が入り・・・恐怖と嫌悪しか感じないような
恐ろしい計画を持ちかけられます。果たしてトニーの選択は!?

スーザンは、小説のなかでの遺体発見シーンを読んだとき
「あなた、殺したのね・・・」と、エドワードに対して裏切りにも似た怒りがこみ上げ
彼のどこに、こんな残忍な側面があったのか?考えます。
絶対、小説の奥さん=自分と重ね、スーザンの潜在意識では
エドワードに殺されたと感じていたハズですから。

過去の結婚生活、過去のエドワード、過去の自分・・・スーザンは過去を振り返り
なぜ、今になってこんな小説を自分に読ませるのか?エドワードは何を考えているのか?
スーザンに何をさせたいのか?・・・
小説を通して結婚していた当時には気がつかなかった
エドワードの知られざる一面を感じとり、あっという間に
スーザンだけでなく、読み手も不安の渦へ放り込まれていきます。

「夜の獣たち」には、小説として終わりが用意されていますが
「ミステリ原稿」では、スーザンの気持ちに終止符は打たれないままになっています。
スーザン自身、知らなかった自分の残酷な一面をのぞき見ることになった原稿。
平穏な日々を過ごしていたスーザンの心の狭間に投げ込まれた小石、「夜の獣たち」は
読み終えてなお、とどまることなく静かに彼女の気持ちに、われわれ読み手に
波紋を広げていくのです。

人間の気持ちは摩訶不思議です。
果たして、わたしたちはどんな側面をもっているのか?
鏡に向かって自問自答したくなる
じっとり湿度の高い梅雨にばっちりの小説「ミステリ原稿」でした。
by mimojiro | 2013-07-11 22:17 |